【史跡散策】真の継体陵?“今城塚古墳”と古墳フェスをリポート《前編》 埴輪と古墳を丸1日満喫!「古墳フェスはにコット」に行ってみた

オリジナルキャラの“はにコットちゃん”と記念撮影するはにわ(筆者撮影)
オリジナルキャラの“はにコットちゃん”と記念撮影するはにわ(筆者撮影)
 みなさん、“今城塚古墳”をご存知ですか? 大阪府高槻市にある全長約190m、2重の濠を含めると約350mの大きさを誇る6世紀前半に造られた前方後円墳です。

 そして、この古墳には全国から4万人以上の人々が訪れる日があるのです。それが、アートと古墳のフェス「古墳フェスはにコット」の開催日です。

 そこで今回は、この今城塚古墳と「古墳フェスはにコット」について散策レポートしたいと思います。

今城塚古墳とは

 今城塚古墳は考古学ファンにとって大変有名で貴重な場所です。何故なら発掘調査の結果、「真の継体天皇陵ではないか?!」と言われるようになったからです。

 宮内庁は隣の茨木市にある “太田茶臼山古墳” を継体天皇陵として治定していますが、築造年代が異なるのに対し、今城塚古墳は年代がピッタリと合います。さらに、祭祀の様子を表した埴輪が多く出土し、当時の祭祀がよく分かる大発見となりました。

 現在、その出土した埴輪群は複製品で完全再現され、今城塚古墳は“古墳公園”として地域の人々の憩いの場となっています。

再現された祭祀埴輪群(筆者撮影)
再現された祭祀埴輪群(筆者撮影)

古墳公園としての今城塚古墳

 国の指定史跡として登録され、天皇陵の可能性が高い今城塚古墳は、墳丘だけでなく内堤・外堤や濠にも自由に入ることができる大変貴重でオープンな古墳です。

 木々が多く生え、広い内濠には芝生広場となり、円筒埴輪や祭祀埴輪が復元されている・・・。歴史ファンにとっては見所満載な史跡。歴史に興味の無い人にとってはゆっくりくつろげる公園。

「公園の中に古墳があるのではなく、古墳全体が公園になっている」
「日本一身近に感じられる天皇陵」

 これが今城塚古墳の古墳公園です。毎年11月にはこの古墳公園で1日だけ実施されるイベント「古墳フェスはにコット」があり、今年で12回目を迎えます。

 昨年(2022年)はコロナの影響で3年ぶりの現地開催(2年間はLIVEアプリでのリモート開催)となりましたが、当日の来場者は “40,000人” を超えたそうです。

 私はせっかく今城塚古墳に行くのなら、面白そうなフェスに合わせようと、かつての2019年「古墳フェスはにコット」開催日に初めて行ってきました。次項でその当時の様子を簡単にお伝えしたいと思います!

今城塚古墳を散策してから「古墳フェスはにコット」へ

 フェス当日は、開催の時間は混むだろうと予測し、開催前の早朝から現地入りして、まずは今城塚古墳を墳活(ふんかつ = 実際に古墳を見に行くこと)。

 外堤から周濠、内堤上に復元された埴輪や墳丘まで見て回ると、さすが天皇陵と言われるだけあって広い!そして、天皇が葬られていたと思われる主体部跡に立てるなんて驚きです。

継体天皇が葬られていた?今城塚古墳の主体部跡(筆者撮影)
継体天皇が葬られていた?今城塚古墳の主体部跡(筆者撮影)

 そもそも天皇陵に入るという普通では考えられない体験ができたうえに、話題の祭祀埴輪群まで見ることができたわけですから、驚きの連続と感動の嵐でした!

 大満足で墳丘から出たときには「古墳フェスはにコット」の開催時刻直前となっていました。

フェス当日の朝の様子(筆者撮影)
フェス当日の朝の様子(筆者撮影)
祭祀埴輪列の横に立ち並ぶ出店者たちのブース(筆者撮影)
祭祀埴輪列の横に立ち並ぶ出店者たちのブース(筆者撮影)
ゆるキャラたちもやってきています(筆者撮影)
ゆるキャラたちもやってきています(筆者撮影)

 フェス会場はあの広かった古墳公園が狭く感じられるほど多くのブースが並び、各地のゆるキャラや古代人の格好をした人があちこち歩いていて、ステージでは様々な催し物が行われ、大変賑やかでした。

 「古墳フェスはにコット」は、今城塚古墳公園で開催するアートの祭典、という趣旨に則り、フェスの出店者には、「古墳・埴輪・古代がテーマの商品を必ず一点以上販売すること」という規定が設けられています。そのため、毎年アーティストや出店店舗が工夫を凝らした「古墳商品」が全店舗に並ぶことも大きな話題となっているようです。

古墳や埴輪などのグッズを販売するお店が並ぶ(筆者撮影)
古墳や埴輪などのグッズを販売するお店が並ぶ(筆者撮影)

 緑あふれる歴史遺産での「古代・古墳とアート表現との融合」から生まれた『古墳グッズ』『古墳フード』は、一大古墳ブームを巻き起こしています。

 また、遺跡発掘を担う島田組さんや文化財PRのために各自治体もブースを出し、アーティストの登竜門的フェスでありながら、ファミリー層からマニアまで楽しめる多様な可能性を持つイベントですね!

主催者メンバーにインタビューを敢行!

 口コミやSNSなどで評判が広まり、今や日本最大の古代フェスとなった「古墳フェスはにコット」ですが、驚くことに主催は自治体でも企業でもなく、“一般人”のみなさんによるボランティアで企画&運営されていたんです。

 …というワケでいきなりなんですが、古墳をこよなく愛する私は、その企画運営に対する想いを知るべく、主催メンバーの中でも特に中心となるお二方に、インタビューを敢行してみました。

はにコット代表のマキ墳さん(写真右)と、がまぐちクリエイターのミカ墳さん(写真左)(筆者撮影)
はにコット代表のマキ墳さん(写真右)と、がまぐちクリエイターのミカ墳さん(写真左)(筆者撮影)

「古墳フェスはにコット」代表 マキリエさん(マキ墳さん)

 先ずは、「古墳フェスはにコット」実行委員会代表のマキ墳さん。「古墳が好きすぎて古墳フェスを作っちゃった」という凄いパワーの持ち主です。

 昔からものづくりが好きだったそうで、2001年からクリエイター活動をスタートさせます。今はクリエイターの活動の場をふやすため、クリエイタープロデュースや企画をメイン活動としつつ、自身では「codai×arts」という古代テーマにしたグッズを制作・発信しています。

 実は彼女、学生時代「歴史は何年に何があったのかと暗記しなくてはならないもの」と苦手意識がついてしまい、歴史は苦手だったそうです。

 その後、大人になって嫁いだ先が高槻市。家から見える場所には草ボーボーで猫が住みつく広場のような荒地のような場所があったそうです。でもそこは、彼女と娘さんが散歩したり遊んだりお弁当を食べたりする大好きな場所で、仕事が忙しい旦那様もお仕事が早く終わった時に家族で行く場所でもありました。

 しかし、この場所が突然閉鎖になり、ショックと衝撃を受けた時に、“ココが古墳公園になるよ”という看板を見て、「私達の好きな場所は今城塚古墳という古墳だったんだ~」と初めて知ったそうです。

 それからは「どんな人がここをつくったのか?」と考えてみたり、土器の線幅で几帳面さを感じたり大雑把さを感じたり、「あの古墳と石の積み方が似ているから交流があったのかな?」など、古墳に関わる人々が見え出した途端におもしろくなったそうで、日本各地への墳活欲が抑えられなくなり、時間を見つけては古墳に会いにいく生活へと変わったようです。そして、今では “古墳にコーフン協会” の大阪支部長までやっております。

 そんなマキ墳さんは、

「はじめは古墳のことを知らなくてもいいと思う。歴史的なこととか難しいことがわからなくてもいいと思う。私は歴史嫌いで全く興味もない人間だったのでわかります。でも、ここ今城塚古墳を好きになるってことは、知るきっかけになると思いました。」

「今城塚古墳に来てもらいさえすれば 好きになってもらえるナゾの自信があるwww。だから、“知らない” ”行ったことない” ではなくて、一度は来て欲しい。そんなプレミアムな1dayをつくるために、古墳フェスが生まれたわけです。」

と話してくれました。

 確かにプレミアムな1日を私も「古墳フェスはにコット」で体験できました。

がまぐちクリエイター『がまぐち屋La Mahina』のミカさん(ミカ墳さん)

 現在、オリジナルデザインの生地を使用した“がまぐち財布”などの作製活動をしているミカ墳さん。

 学生時代は日本史が1番の苦手科目だったそうで、苦手すぎて高3の最後の試験で18点を取ってしまい、補習&追試を受けていたといい、

「今何がそんなに苦手だったのかを思い返すと、たぶん先生の話に”興味がなかった”というのが1番大きかったんじゃないかと思います。」

と回想しています。ミカ墳さんにとって“今城塚古墳”は、

「今城塚古墳が自宅から徒歩圏内だったこともあり、”古墳”という場所だとは知ってはいるけれど、”子供とボール遊びができる公園” という認識で遊びに行っていました。」

ということです。

 そんなミカ墳さんが「古墳フェスはにコット」と出会ったのは、2012年秋。ママ友さんがここに出店するという話を聞き、子ども達と遊びに行ったのが第2回「古墳フェスはにコット」だったそうです。

 その後、マキ墳さんと出会い意気投合。2013年の第3回目からは出店者として参加。「実行委員としてフェスの運営手伝おうか?」と聞くも「いや、それはいいわ」と断っていたマキ墳さんが、2017年に「どうしても今のままだと厳しいから実行委員になってくれへんか?」という一言から実行委員兼出店者となったそうです。

「出店条件に【古墳や埴輪、古代をモチーフにした作品を生みだすこと】という鉄の掟があり、それをクリアする為、生地デザインする際に、浅い知識や見よう見まねのマネッこは自分で愛せないデザインになるというこだわりから、博物館や歴史館に行き実際に目でみて感じる、学芸員さんの話を聞きその当時の人たちに想いを馳せながらデザインするというところで、初めて歴史が面白い!」

「ただの過去の事実というだけでなく、その当時の人 たちも今のワタシたちと大差なく ”人間” だったんだと思うと他人事だったものがスっと落ちてくるというか、言葉にし難い感覚があり、学生時代にあんなに興味も面白さもわからなかった【歴史】が ”興味深い”、”もっと知りたい” に変わった瞬間でした。」

 と話してくれました。

 彼女の“歴史は面白い”がそのまま「古墳フェスはにコット」に表れていると私は思います。

今年の「古墳フェスはにコット」は11月26日(日)開催!

 来場者の投票によって古墳グッズと古墳フードのNo.1が決定する“古墳-1グランプリ”をはじめとして、毎年恒例のイベントだけでなく、新エリア“子どもASOBIの谷”がオープンするようです。

 また、サンリオとのコラボでサンリオキャラと古墳のコラボクレープが登場したり、キティーちゃんと古墳のコラボしたフェスグッズが販売されます。

 さらに今年は日本各地から“古墳といえばココ!”と言われるような、メジャーな日本各地の古墳も10ヶ所以上ブース展開されるようです。

昨年(2022年)の「はにコット」の様子(筆者撮影)
昨年(2022年)の「はにコット」の様子(筆者撮影)

 さて、後編においては今年の「はにコット」の様子や、今城塚古墳に隣接する今城塚古代歴史館へ実際に足を運び、リポートしたいと思っております。

 みなさんもぜひ「古墳フェスはにコット」へ行ってみてはいかがでしょうか? 歴史や史跡についての考え方が変わったり、楽しみ方が増えたりするハズですよ!!

☆第12回「古墳フェスはにコット」概要☆

  • 開催日:2023年11月26日(日)
  • 開催時間:10時~16時 入場無料
  • 開催場所:今城塚古墳公園(いましろ大王の杜) 大阪府高槻市郡家新町48-8
  • 公式HP:https://hanicotto.com/

※追記:第12回フェスにも足を運んでまいりました!ぜひ、今城塚古墳”と古墳フェスのリポート後編もご覧ください。



【参考HP】

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  この記事を書いた人
まつおか はに さん
はにわといっしょにどこまでも。 週末ゆるゆるロードバイク乗り。静岡県西部を中心に出没。 これまでに神社と城はそれぞれ300箇所、古墳は500箇所以上を巡っています。 漫画、アニメ、ドラマの聖地巡礼も好きです。

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