【史跡散策】真の継体陵?“今城塚古墳”と古墳フェスをリポート《後編》 埴輪と古墳を丸1日満喫!「古墳フェスはにコット」に行ってみた

「古墳フェスはにコット」会場で巨大古墳クッションと記念撮影するはにわ(筆者撮影)
「古墳フェスはにコット」会場で巨大古墳クッションと記念撮影するはにわ(筆者撮影)

※前編をご覧になられていない方はぜひ、今城塚古墳と古墳フェスリポート《前編》もご参照ください。


第12回「古墳フェス はにコット」開催当日の朝

 「古墳フェス はにコット」とは、大阪府高槻市郡家新町にある今城塚古墳を会場にした、世界初で最大級の「アートと古墳のフェス」です。2023年11月26日(日)に第12回目が開催され、私も会場に足を運んでまいりました!

 その当日。開場は10:00ですが、フェスに出店する人やステージに出演する演者、地元の古墳や魅力をPRする各自治体の人などは、早い時間から会場に来て準備を開始。この時間帯は、会場全体が直前準備で慌ただしい中にもソワソワ感と期待感の漂う雰囲気につつまれます。

 私が会場に到着したのは9:00すぎ。まだ開場まで1時間程あります。しかし、会場内にはすでに多くの来場者の姿が…。

開場1時間前にして既に多くの来場者を見て驚くはにわ(筆者撮影)
開場1時間前にして既に多くの来場者を見て驚くはにわ(筆者撮影)

 早くもお目当てのお店(当然ですがまだ準備中です)の前に並んでいる人や本部周辺でパンフレットを見ながら「どこ見ようね~」なんて話している親子等々。

 今回は、これまでに比べて人の入りが早い!!あらためて「古墳フェスはにコット」の知名度・期待度の高さを痛感しました。

フェス代表のマキ墳さんとミカ墳さんにご挨拶

 前編でインタビューに答えてくれたミカ墳さんがいたので声を掛けると、

ミカ墳さん:「来てくれてありがとう。無事開催できて良かった~。けど、私自身の店の準備が全然できてへん。大変やわ~」

 満面の笑みで話してくれました。そんな彼女は開場前から大忙しな様子でした。その後、フェス代表のマキ墳さんもいたので挨拶をしました。

マキ墳さん:「ホンマ、いい天気で今年も開催できて良かったわ~!」

 無事の開催を喜ぶマキ墳さんは既に涙目?開催までの苦労が偲ばれます。

第1回目の来場者は3,000人

マキ墳さんは、初めて開催した第1回目の思い出として

  • 第1回の時の来場者は3,000人程。事前の情報を聞いて地元のNHKも当日取材に来てくれた。
  • フェス当日は“今城塚古墳から古墳とアートを発信するぞ!”と呼びかけ、40数名のクリエイターと8店舗の飲食店が集結してくれた。
  • 今の10分の1程度の来場者数だったけれど非常に嬉しかった。

等の話をしてくれました。

 そもそも、この「古墳フェスはにコット」という名前ですが、最初は「古墳フェス comecome* はにコット」だったようです。

 古代とアートの融合をコンセプトとしたイベントを、一般人のボランティアだけで開催することが果たしてできるのか?やるなら多くの人に来てほしい!だから「comecome」という言葉を入れたことも教えてくれました。

フェス当日会場内の様子

 開場15分前、今城塚古墳の埴輪祭祀場横にてオープニングアクト"和太鼓演奏"が盛大に始まりました。

 いよいよ開場です!

オープニングアクトの様子(古墳フェスはにコット撮影)
オープニングアクトの様子(古墳フェスはにコット撮影)

 古代をモチーフにした魅力的な作品(商品)が会場内のあちこちに並び、内濠と外濠に設置された2つのステージではそれぞれ催し物が行われ、例年同様ご当地キャラが会場内を歩いて来場者と触れ合う・・・。

会場内の様子(古墳フェスはにコット撮影)
会場内の様子(古墳フェスはにコット撮影)
ご当地キャラが来場者とふれあう(古墳フェスはにコット撮影)
ご当地キャラが来場者とふれあう(古墳フェスはにコット撮影)

 今年はクリエイターによる出店が114、飲食店は32、観光&古墳PRブースを開いた自治体は11で、企業等による出店が6。その他、広い内濠や内堤では“体験型”アトラクションの数々。
これらを全て見ていくと1日では絶対に足りません!

フェス会場のマップ(筆者撮影)
フェス会場のマップ(筆者撮影)

 このマップを見れば、今城塚古墳全体が本当にフェス会場となっていることが分かっていただけると思います。

外濠ステージの様子(古墳フェスはにコット撮影)
外濠ステージの様子(古墳フェスはにコット撮影)
ハローキティのストリートピアノで演奏する来場者(筆者撮影)
ハローキティのストリートピアノで演奏する来場者(筆者撮影)
内濠で行われていた“段ボール古墳村”(筆者撮影)
内濠で行われていた“段ボール古墳村”(筆者撮影)

隣接する「今城塚古代歴史館」も必見!

 前編でもご紹介しましたが、今城塚古墳はその規模や出土品などから国指定史跡であり、“真の継体天皇陵”と言われているくらい立派な古墳です。

 この今城塚古墳の歴史や出土品を紹介&展示しているのが「今城塚古代歴史館」です。

歴史館に続く道には子供たちが描いた“はにコン”作品が展示されていました(筆者撮影)
歴史館に続く道には子供たちが描いた“はにコン”作品が展示されていました(筆者撮影)

 外でフェスをやっているとは思えないくらい静かな館内には多数の埴輪(本物)が展示されており、埴輪ファンにとっては天国です!

出土した埴輪たち(筆者撮影)
出土した埴輪たち(筆者撮影)

 さらに石棺のレプリカや墳丘に葺石を並べる作業の様子が展示されており、あらためて今城塚古墳の壮大さや貴重さを実感することができました。

 またこの時は、企画展として “たかつき発掘~遺跡が語る高槻の歴史~” も実施されており、今城塚古墳以下の高槻市内の遺跡と出土品が紹介されていました。

 拝観料はなんと「0円」という、太っ腹すぎる高槻市! ここは必見です。

フェス会場だけど国指定史跡「今城塚古墳」

 フェス会場では “発掘体験” や “古墳散策” という今城塚古墳の案内ツアーがあったり、“古墳 × 防災脱出ゲーム”として約400年前の地震の被害跡が残る墳丘内を探検しながら防災について学ぶゲームが実施されたり、と楽しい中にも今城塚古墳を学ぶ企画も用意されていました。

 さすが国指定史跡にして天皇陵?な「今城塚古墳」ですね。

今城塚古墳最大の見所“埴輪祭祀場”は完全復元されています(筆者撮影)
今城塚古墳最大の見所“埴輪祭祀場”は完全復元されています(筆者撮影)

なぜ古墳でアートイベント?

 私の率直な疑問でした。この疑問にマキ墳さんは答えてくれました。

マキ墳さん:「1500年も前の人達が作ったお墓である古墳が、その時代その時代でいろんな危機や開発がある中でも、そこにいた人達がバトンを繋ぐように形を変えながらも守ってきたのが今城塚古墳です。今はこんなに憩える古墳公園となっていて、時と共に皆の思い出が一緒になってその地にいてくれます。そういう古墳がある高槻に住む私たちは恵まれています。

 でも、これは当たり前じゃないんです。公園化された当初は、“古墳公園ができたよね!”と話しても、地元の人達の中には、そこが古墳と知らない人やそうなんだーくらいで歴史に興味ないわーって言う人がめっちゃ多くて衝撃でした。きっと私は本来同じ考えだったろうな、て思います。

 たまたま私が今城塚古墳が好きだったから興味と熱量の塊になっていただけなんですよね。普通では当たり前の反応だったと思います」

古墳とアートを融合させるマキ墳さん(古墳フェスはにコット撮影)
古墳とアートを融合させるマキ墳さん(古墳フェスはにコット撮影)

マキ墳さん:「ただ、当時の私は好きな古墳にまた通える喜びと、市民の反応のギャップについていけず、“なぜだ?なぜなんだ????もっと知って欲しいこの古墳を!” と思うのと同時に使命感が生まれてしまったんですよねw

今思えばおかしなことですが、当時は何もおかしさには気づかずメラメラメラッと “この古墳を発信するのは私の使命だ!” くらいに思ってしまったんですよね www

 クリエイターとして活動をしてきた自分ができることは、古墳とアートを繋げて、来てもらうきっかけや知ってもらうきっかけを作ること。”もうコレしかない!” という強い想い。そこでアート仲間にうったえて賛同してもらい、日本各地から仲間を呼び、みんなで古墳を発信することだ、と…。その時に生まれたのが ”古墳フェスはにコット” です。

 初めは古墳グッズや古墳フードはまだまだ打ち出しは弱かったものの、間違っていない!と思いました。アートやフードといったあらゆるコンテンツにおいて、古墳や埴輪や古代を掛け合わせて発信すれば、歴史が好きなユーザーだけではなく、一般層のユーザーにも足を運んでもらえて知るきっかけを私たちが作れると思ったからです」

実行委員もすべて一般のボランティア(古墳フェスはにコット撮影)
実行委員もすべて一般のボランティア(古墳フェスはにコット撮影)

マキ墳さん:「何百本もの埴輪が立ち並ぶ今城塚古墳が会場で、古墳フードを食べて古墳グッズを見て古墳ワークショップをして歴史館で学ぶ…。私たちにとって、フェスは古墳を知ってもらうための方法ときっかけです。

 歴史好きの人もそうでない人にも、知る見る感じることで楽しんでもらい古墳や歴史を知る間口が広がればと思っています」

ボランティアで集まったスタッフ“スタッ墳”による準備(古墳フェスはにコット撮影)
ボランティアで集まったスタッフ“スタッ墳”による準備(古墳フェスはにコット撮影)

「古墳フェスはにコット」から学ぶこと

 このサイトをご覧の方は歴史が好きだと思います。

 私もそうです。私は小学生から歴史が大好きになり、高校3年生の時は全統模試の日本史で全国1位を目指して勉強していました。

 でもこの時、歴史が“勉強=義務”となり、歴史が楽しく感じなくなった経験があります。みなさんはいかがですか? 学校の授業で歴史を学ぶので、テストはあるし点数化され評価もされます。しかし、学びというのは知識より興味が一番重要ではないかと私は思います。

「古墳フェスはにコット」に参加した子供たちは “あの楽しかったイベント会場が古墳なんだ” という記憶は決して忘れないでしょう。“埴輪って可愛いな、古墳って奥深いな、歴史っておもしろそうだな”と参加した大人たちはあらためて思ったでしょう。

 古墳や歴史に対して興味を持つきっかけが何歳になってもあることは素晴らしいと思います。「古墳フェスはにコット」は、ただのフェスではありません。真剣に歴史についての捉え方や考え方を省みる良い機会だということを学びました。だからこそ歴史が大好きな皆さんにも、ぜひ体感して欲しいと思います。

グランドフィナーレはみんなで”come come* はにコット”を熱唱(古墳フェスはにコット撮影)
グランドフィナーレはみんなで”come come* はにコット”を熱唱(古墳フェスはにコット撮影)

最後にマキ墳さんからひと言


マキ墳さん:「皆さんにお伝えしたいことは ”十墳十色 古墳は本当におもしろい!” まさにコレを伝え広げていきたいです」
 


【参考HP】 【取材協力】
  • 古墳フェスはにコット実行委員の方々
  • 当日ボランティアのスタッ墳の皆様

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  この記事を書いた人
まつおか はに さん
はにわといっしょにどこまでも。 週末ゆるゆるロードバイク乗り。静岡県西部を中心に出没。 これまでに神社と城はそれぞれ300箇所、古墳は500箇所以上を巡っています。 漫画、アニメ、ドラマの聖地巡礼も好きです。

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