「神社」は身近なタイムカプセル!?~「神社」で歴史を感じよう~
- 2023/10/27
【目次】
歴史を感じよう
歴史とは“過去のこと”を勉強するので、“感じる”というより“知る”イメージのほうが強いと思います。しかし、実際に遺跡へ行くと歴史を五感で感じることができます。「昔から眺めが良かっただろうな」という視覚や「昔の建物にしてはしっかりとした造りだ」といった触覚など…。
また、有名な遺跡の近くに行くと、古代米(赤米)や古代食を再現して出してくれるお店もあり、そこでは味覚も楽しめます。何だか古代の空間に足を踏み入れたような感覚になります。だから、実際に遺跡へ行って体感してほしいのです。
そこで、今回は数ある遺跡の中でもみなさんの一番身近にある遺跡をご紹介します。
その遺跡とは「神社」です!!
そもそも神社って遺跡なの?
厳密に言うと遺跡ではありません。史跡として指定されている神社もありますが、全てではありません。ここで「遺跡」と「史跡」の違いを説明します。『広辞苑』によると、以下のように違いが書かれています。
- 遺跡…過去の人類が残した遺構もしくは遺物のある所。
- 史跡…歴史上の出来事にゆかりのある場所・施設などのうち、国・地方自治体が指定した学術的価値の高い文化的遺産。
しかし、神社には過去の人類が残したものを感じられる要素がいっぱいあります。だから、今回は神社を遺跡として捉え、歴史を感じてもらおうと思います。
神社とは? 神様を大別すると…
「神社」とは「神様のいる場所」です。では、「神様」とは何かというと大きく2つの種類に分かれます。1つ目は「記紀神話」に登場する神様です。
伊勢神宮の天照大御神、出雲大社の大国主命などです。神社に祀られている神様が「〇〇命(神)」と書かれていたら大抵この種類の神様です。
2つ目は「人物」の神様です。
菅原道真(天満宮)や徳川家康(東照宮)など歴史上の有名人だけでなく、近代日本を作るうえで犠牲となった人々(靖国神社や護国神社)も神様になっています。
これ以外にも、その土地に古くから伝わる神(土着神)や、外国から入ってきて習合した神様(七福神など)を祀る神社もあります。
特に古い歴史を持つ神社「式内社」
“式内社”という言葉をご存じでしょうか?式内社とは、927年(平安時代)に作られた『延喜式』という法律書の「神名帳」という全国の神社リストに記載された由緒ある神社のことで、官幣大社・官幣小社・国幣大社・国幣小社の4つに分類されます。
つまり、式内社は927年時点で既に存在している神社ですから、1000年以上前の歴史を感じることができる貴重な場所です。
なかには弥生時代から続く神社も!?
私の住む静岡県浜松市に“蜂前神社(はちさきじんじゃ)”という式内社(国幣小社)があります。この神社の『由緒書』には、十五代應神天皇十一年庚子三月八日(西暦二七〇年)に八田毛止惠と云う人が勅命によって遠江國に下向して八田(祝田村の古名)四十五町 廣田(刑部村の古名)七十町 岩瀬(瀬戸村の古名)八町三反 合計百二十三町余りを開墾して本社を八ヶ前に勧請して蜂前神社と斎き奉り子孫代々祝部として奉仕しました
と書かれてあります。なんと、3世紀後半(弥生時代)からずっと存在し続けている神社なのです!
※参考:宗教法人 蜂前神社HP
これくらい昔のもので無くなることなく存在し続けている遺跡は古墳くらいでしょうか。もちろん、現在境内にあるものは後世に建て直されていますが、周辺の田畑を良く見渡すことができ、豊作を祈るためには最適な場所です。
また、周りの森からは風の音・鳥の声が聞こえ、草木の香りや社殿の古びたにおいもしてきます。当時の人と同じ空間を共有している気分になれ、まさに歴史を感じることができます。
本当に弥生時代から神社はあったのか
『列島の考古学 弥生時代』で森岡秀人氏は、神殿や神社など神マツリのための施設は(中略)日常生活臭の届かぬ、穢れのおよばない村里からは少し離れた場が選択された(中略)祭場の一角に心霊を迎えるだけの簡素な仮社殿を設ける。これがやがて年中存在するようになって常設するのが神社の始まりというのである。
と書いています。
農耕が本格的に広がった弥生時代ですから、豊作を祈るマツリも人々にとって身近なものになったと思われます。今のような立派な社殿は無いにせよ、神社は弥生時代から存在していたのでしょう。
式内社はどこにあるのか?
話を式内社に戻します。神社には鳥居の前や横に神社名が彫られている石柱(社号標)が建っていることが多いです。そして、そこには“社格”も一緒に彫られています。
そこに“式内社”または“式内”、大きい神社によっては“官(国)幣”という文字が見えたら式内社です。ぜひ式内社を探して、1000年以上前から続く空間で歴史を感じてみてください。
なお、社格をセメントで消している社号標があります。これは、戦後の民主化政策の中で社格制度が廃止されたとき、GHQからの干渉が入ることを恐れた神社が、廃止された社格を消した名残です。ですから、うっすらでも“式内社”の文字が見えたらそこは立派な式内社です。
神社のランク付け「社格」
式内社は「官幣大社・官幣小社・国幣大社・国幣小社の4つに分類されます」と書きましたが、この分類がいわゆる “社格” といって、簡単に説明すると “神社のランク付け” となります。これは奈良時代に作られたもので、官幣社は神祇官(中央)、国弊社は国司(地方)が管理する神社です。
一方で、明治時代に新たな社格制度ができます。全国の神社を、明治政府は
- 官社(官幣大社・官幣中社・官幣小社・国幣大社・国幣中社・国幣小社)
- 諸社(県社・郷社・村社)
- 無格社
に分類しました。明治時代にできた制度ですから、式内社ではない神社も当然含まれます(927年以降に建てられた神社)。
例えば、京都にある“平安神宮”は平安遷都1100年を記念して明治時代に建てられた神社ですので、明治の社格では官幣大社ですが式内社ではありません。
ちょっと、わかりにくいですね・・・。
身近な神社で歴史を感じてみる
実は、式内社のような古い神社でなくても、みなさんの近所にある神社でじゅうぶん歴史を感じることができます!ですから、どこでも構いませんので身近な神社に行ってみましょう。実際に神社に行くと境内にはいろいろなものがありますね。入口に立つ鳥居、手口を清める手水舎、拝殿前にいる狛犬等々。これらは後ろ側に“いつ造られた”か書かれて(彫られて)いることが多いのでチェックしてみましょう。
「えっ?こんな昔に造られたの?!」とビックリするものもありますが、大抵直接触ることができます(禁止されている場合もありますので、ご注意を!)。
昔に造られたものを間近で見て触る機会なんて、普段なかなかありません。風化した姿形や触り心地など、長い歴史を存分に感じることができます。
それでもし興味が出てきたらいろいろと調べてみましょう。鳥居はその形状から何種類にも分類できますし、狛犬も時代や場所によって姿や表情が違います。また、そこに祀られている神様を調べてみるのも良いかもしれませんね。
まとめ
神社は昔の面影がつまったタイムカプセルのようなもの。実際に神社へ行ってみると、“知る”歴史だけでなく、“感じる”歴史の楽しさに気付くはずです。身近にある神社の中でゆっくりと歴史を感じてみてはいかがでしょうか?【主な参考文献】
- 『国史大系 第二十六巻』吉川弘文館(1999年)
- 『広辞苑』新村出 岩波文庫(2018年)
- 『列島の考古学 弥生時代』森岡秀人他 河出書房新社(2011年)
- 『日本の神社を知る事典』渋谷申博 三笠書房(2012年)
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