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幕末の天才囲碁棋士が書き残した10の戒めとは?

敲玉餘韵の冒頭にある本因坊秀策筆の囲碁十訣(国立国会図書館デジタルコレクションより)
敲玉餘韵の冒頭にある本因坊秀策筆の囲碁十訣(国立国会図書館デジタルコレクションより)
 本因坊秀策は江戸時代末期に活躍した囲碁の棋士です。史上最高の天才との呼び声高く、34歳の若さで病死した悲劇性と相まって、囲碁界では伝説的な存在になっています。

 大ヒットした少年漫画「ヒカルの碁」では、平安時代の天才棋士・藤原佐為の霊が、主人公のヒカルの前に依り代としていた人物でもありました。そんな秀策の棋譜が収録されている「敲玉餘韵(こうぎょくよいん)」という本があります。その冒頭、秀策の筆跡で対局時に心がけるべき10の戒めが、「囲碁十訣(けつ)」としてしたためられています。

 その10の戒めとは以下の通りです。

  • 不得貪勝(貪りては勝ちを得ず)→欲深く勝とうとするな
  • 入界宜緩(界に入らば宜しく緩なるべし)→敵の勢力圏では緩やかに戦え
  • 攻彼顧我(彼を攻めるに我を顧みよ)→相手を攻める時は自分が大丈夫か確かめよ
  • 棄子争先(子を棄てて先を争え)→小さい石は相手に与えて先手を取れ
  • 捨小就大(小を捨てて大に就く)→小さい利益よりも大きい利益を考えよ
  • 逢危須棄(危うきに逢わば須く棄つべし)→危なくなったら迷わず切り捨てよ
  • 慎勿軽速(慎しみて軽速なる勿れ)→軽率にならず慎重に戦え
  • 動須相応(動けば須く相応ずべし)→相手の動きをよく見て対応せよ
  • 彼強自保(彼強ければ自ら保て)→敵の勢力圏では自身の安全を優先すべし
  • 勢孤取和(勢孤なれば和を取れ)→孤立していたら無理せず穏やかに収まれ

 ・・・どれも「うーん、なるほど」とうなるような言葉ですよね。これらの金言は囲碁の対局のみならず、現代のビジネスや人間関係にも通じそうです。囲碁は昔から財界人や政治家に愛好されてきました。それは単なる遊戯でなく、人間の営みを小さな盤の上に再現するような奥深さがあるからではないでしょうか。

 在りし日の秀策が書いた「囲碁十訣」は、敲玉餘韵を編んだ石谷廣二に宛てたものでした。石谷は秀策と郷里が近く、自身も一流の碁打ちでしたが、秀策の才能の信奉者だったようです。秀策亡き後もその素晴らしさを後世に伝えることに情熱を注いでおり、秀策の名棋譜を集めた同書はその集大成といえるでしょう。

 ただし、この囲碁十訣は秀策自身が生み出したものではありません。当人が座右の銘としていた古の訓戒でした。そもそもの文言は今から千数百年前、唐の六代皇帝・玄宗の時代の囲碁棋士・王積薪(おうせきしん)が考案したといわれています。それほど大昔の言葉が今でも通用するのですから、囲碁というゲームの普遍性には驚かされます。

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  この記事を書いた人
かむたろう さん
いにしえの人と現代人を結ぶ囲碁や将棋の歴史にロマンを感じます。 棋力は級位者レベルですが、日本の伝統遊戯の奥深さをお伝えできれば…。 気楽にお読みいただき、少しでも関心を持ってもらえたらうれしいです。

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