元寇から日本を守ったのは神風だけじゃない

神風が元の軍勢を破った

　元寇１回目の侵攻となる文永の役において、元軍は突如吹き荒れた神風によって壊滅し、日本側が勝利したとされています。

　その背景に見られるのが、当時の日本では元寇を日本の神と異賊の争いとする考え方が一般的となっていました。元軍を撃退できたのは「折伏・祈祷による神力、および神風である」と神社などは大いに宣伝し、さらには幕府に対して恩賞を求めるほどだったそうです。

　公家の広橋兼仲の日記となる『勘仲記』の中でも、神風は神明のご加護だと神に感謝しています。太政官から諸国や寺社にあてて発給した下文においても、霊神の征伐として神風が吹き、元軍を打ち破ったということが書かれており、当時から元軍を襲った暴風雨を神風とする認識が存在していたことを示しています。

無能な鎌倉幕府が元寇の原因

　実は当時のモンゴル帝国にとって、日本を攻める必要などなかったのです。海を越えての出兵など、ロスが多すぎます。元寇の前の１年間、モンゴル帝国は日本に向けて使者を送っており、モンゴルに戻った使者は皇帝フビライに「日本などに兵を送っても割に合わない」と報告しているんです。さらにモンゴル帝国は、日本に服従を求めてもおらず、日本に送った国書も驚くほどに丁重なものだったとか。

　では何故、モンゴル帝国は２度も日本に侵攻をしたのでしょうか？

　それは鎌倉幕府の対応があまりに不適切だったからです。当時の幕府は、送られてきた国書の正しい内容が理解できなかった、時代が時代ということもあり、外国語に不慣れなのはしょうがないところですが…。それでも、使者が何人も来ているわけで、きちんと話を聞くという姿勢があれば、問題なく対応できたはずですよね。

　しかし幕府の中枢にいた北条氏はモンゴルの使者を無視して、来るなら来いの態度だったとか。その無礼な対応に皇帝フビライは激怒したのです。もしも幕府が真摯な態度で臨んだのなら、その後の日本史は全く違ったものになっていたかもしれませんね。

元寇に勝利したのは神風のおかげ

　私たちが勉強した元寇では、元軍の攻撃に成すすべもなかった幕府軍、もう一巻の終わりかという時に、突如の台風が元軍を襲い、辛くも勝利したと習いましたよね。その後、日本の皆さんはこの台風を「神風」と呼び、敵が日本を攻撃していても、神様が敵を打ち負かしてくれるというような、根拠のない信仰となってしまったのです。

　ただ、正確に言うと、弘安の役では台風が実際にやってきたのですが、文永の役は１１月となり、台風の時期ではありません。しかし発達した低気圧が大嵐を起こすことは今でもあることで、本当に台風が襲来したのは１回目だけで、２回目の時は冬の始めに発生する低気圧が原因となる大嵐によって、元軍は甚大な被害を受けたのでしょう。

忘れちゃいけない鎌倉武士の頑張り

　元軍の攻撃は５月後半から、九州北部に仕掛けてきました。それから約２カ月もの間、鎌倉幕府の軍は元軍の九州上陸を防いでいたのです。なかなか上陸ができない元軍が上陸に手間取っている間に、ついに台風シーズンに突入。そして７月末から８月初めにかけて大型台風が九州北部を通過し、軍船などをはじめとして元軍に甚大な損害をもたらしたのだとされています。

　しかしこの台風は、幕府側にとっても大きな損害が発生しています。台風が通過した後は、鎌倉幕府でも軍船の調達が困難になったという記録が残っているんですよ。直接的には台風が元軍に大きな打撃を与えたのですが、台風が来るまでの間、約２カ月にわたって防戦し続けた鎌倉武士の奮闘ぶりも見逃せませんよね。現代中国の評価でも、元軍の敗戦理由は日本武士団の頑強な抵抗によるものだとされ、台風は最後の追い打ちだったという見方になっているようです。