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プレゼントにラクダ? 長崎・丸山遊郭の特徴
- 2024/07/24
鎖国時代の日本で唯一の貿易港として栄えた長崎。そんな長崎にあった丸山遊郭は、ほかとは一風変わったシステムがありました。
吉原遊郭と丸山遊郭の違い
吉原も丸山も、幕府が認めた合法的な遊郭です。しかし、この2つの遊郭はその成り立ちや遊女の立場まで、さまざまな違いがありました。吉原遊郭の特徴
- 店からの支給は簡易装備のみ。衣装や飲食は自分持ち
- 遊郭を出るには借金を返すか、身請けしかない
- 遊女は特別な場合以外、吉原から出ることはできない
- 妊娠、出産ができるのは高位の遊女のみ
- 死んだら死体は寺に投げ入れられ、供養もなし
きらびやかな印象の強い吉原ですが、その内情はまさに「苦界」です。店からはゲームのレベル1のような簡易な装備や食事しか与えられません。料理や布団、着物にいたるまですべて自分で稼ぎ出さなければならないのです。(それも法外な値段で…)
身請けと年季明け、このふたつが遊女が自由になる方法ですが、借金の額が膨大だと、これもなかなか難しいのです。
しかし、丸山遊郭では遊女の基本ルールなどは同じでも、客選びは遊女の意思に委ねられていて、引退も吉原より容易だったようです。
国際都市・長崎の遊郭
なぜ、丸山遊郭が比較的自由だったのか。それは、丸山遊女たちが長崎の経済を支える存在だったからです。長崎は鎖国時代、唯一の国際貿易港でしたが、周辺には貿易ができるような特産品がなく、現地にはお金が落ちません。そこで、丸山遊郭の遊女たちが日本人商人や外国人を接待することで、その遊興費で長崎の街は潤っていきました。
また、遊女屋はコミュニティの構成員として地域に認められていました。有名な「長崎くんち」などの祭りに遊女が参加したり、遊女屋が祭りの費用を負担したりと、遊女屋は街の発展にも貢献しました。
しかし、一方で遊女屋の経営者は、人間が持つべき八つの徳を亡くした「亡八」と呼ばれ、裏では差別されていたようですが…。
このように、長崎の街に受け入れられていた丸山遊郭は、他の遊郭にはない特徴がありました。
丸山遊郭の特徴
- 高位の遊女以外でも妊娠、出産が可能
- 遊女は出島や街内を自由に行き来できた
- 本人が望めば客を選ぶことができた(外国人担当が嫌なら希望が通った)
- 引退すれば実家にもどって結婚することもできた
遊女たちは街の稼ぎ頭で、アイドルのような存在でした。そのため、丸山遊郭では遊女が引退してから地元で結婚したり、他で働けなくなった元遊女たちを保護したりという救済システムが整っていたそうです。
また、通常は「籠の鳥」である遊女たちですが、オランダ人のいる出島や唐人街(中国人居住区)を行き来できたため、店の遊女全員が集まるのは正月くらいだったとか。
遊女参加型のイベント
国際都市である長崎の遊郭がほかと圧倒的に違うのが、キリスト教と外国人客です。毎年遊郭では隠れクリスチャンを探すための「絵踏」が行われていました。江戸時代後期になると「絵踏」はだんだんイベントのようになり、遊女の素足見たさに丸山に人が押し寄せたのだとか。
そして、遊女たちが日本人以外の客を相手にすることが、丸山遊郭最大の特徴でした。
桁違いな外国人のプレゼント
丸山遊郭の遊女たちは主に「唐人(中国人)」「オランダ人」という外国人客の相手をします。唐人たちは本国での遊郭遊びが禁止されていたため、わざわざ海を渡って遊女に会いに来たり、帰国の際には彼女たちが困らないように、まとまった金額のお金を渡してくれたそうです。
遊女へ貢ぐ金額は、オランダ人も負けていません。実はオランダ人が遊女屋に支払う料金は、日本人客より安く設定されていました。しかし、それでも遊女たちがこぞってオランダ人客を求めたのは、その桁違いのプレゼントからでした。
長崎の遊郭の特徴として、遊女は外国人客からかなりの額のプレゼントをもらっています。中には「ラクダ」をもらった遊女もいたそうですが、これはさすがに飼うことはできないので見せ物小屋に売ったけれども、高額で売れたのだとか。
そのほか、オランダ人は日本では高価だった砂糖を報酬やプレゼントとして贈っています。東南アジアでは安価で取引でき、日本では黄金並みの価値になるので、遊女たちはそれらを換金して副収入を得ていました。
そのため、遊女たちは外国人客に気に入られようと、さまざまな営業努力を行ったそうです。
ただ、ロシア人だけは酒ぐせが悪いので嫌われていたんですって。
まとめ
遊女といえば「籠の鳥」というイメージがありましたが、丸山遊郭では比較的自由に外出ができた、というのには驚きでした。また、引退後に結婚した遊女も多く、彼女たちが長崎の人々に受け入れられていたことがわかります。遊女の歴史は辛酸なものが多いのですが、丸山遊郭はその中でも救いがあるような気がしました。
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