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戦後文化と流行語 カムカム英語とアプレ・ゲール
- 2024/06/24
時代とともに移り変わる流行語。そんな古い流行語を知ると、歴史の風景が見えてきます。戦後に流行したのは、新しい時代の価値観を表す、外国語まじりの言葉でした。
敗戦と性産業の流行語
太平洋戦争終結後、進駐軍の流入とともに、新しい価値観を表す言葉が生まれました。アプレ・ゲール
「アプレ・ゲール」とはフランス語で「戦後」を意味し、戦後によく使われた言葉です。略して「アプレ」とも。旧来の価値観を否定した奔放な生き方に対し、否定的な意味で使われました。パンパン、オンリー
占領期の負の歴史といえば、進駐軍相手の売春婦・「パンパン」の登場があります。こうした兵士向けの性産業は、旧日本軍も占領地で行っていたので、いわば「必要悪」でした。パンパンの中では、将校など上級の兵士ひとりを相手にすることを「オンリー」と言いました。これまで貞操や従順を義務付けられた日本の女性たちにとって、良くも悪くも「性の開放」が始まったのが戦後という時代でした。
カストリ雑誌
性の開放は映画や雑誌など、メディアにも及びました。戦後の混乱期は厳しい検閲が行き届かなかったため、「カストリ雑誌」というインディーズ系のエロ雑誌が多く出版されていました。名前の由来は「粕取り焼酎」から。「三合(三号)でつぶれる」といったシャレから呼ばれるようになりました。
戦後生活と文化の流行語
進駐軍は英語という異文化と性の解放をもたらしました。戦後の一時期は、英語教材がベストセラーになるほどブームとなったのです。カムカム英語
朝ドラで一躍有名になった「カムカム英語」は、平川唯一によるラジオ英会話講座のこと。「しょ、しょ、しょうじょうじ」のメロディにのせて「カムカムエブリバディ」を歌ったことで人気番組になりました。また、英語で呼び込みをする人のことを「カムカムおぢさん」と呼ぶなど、関連語も多く生み出されました。
接吻映画
戦前、映画でのラブシーンは検閲の対象でしたが、戦後は占領軍の民主主義政策のもとキスシーンが解禁。キスシーンのある映画は「接吻映画」と呼ばれ、世間は否定的だったそうです。当時はキスシーンひとつで大騒ぎだったんですね。食糧難と流行語
食糧難だった戦後は、さまざまな代用品が出回った時代です。中には怪しげな材料を使ったものも多かったとか。メチルアルコール中毒
戦後の一時期は酒類の販売が禁止されていたため、工業用アルコールを使用した「バクダン」と呼ばれた密造酒が出回ります。毒性の強いメチルアルコールを使ったため、中毒死する人が増加したそうです。おそらく「バクダン」の由来は「当たれば死ぬ」ということなのでしょう。
サッカリン・ズルチン
サッカリンやズルチンは砂糖の代用品として開発された人工甘味料です。戦後の料理レシピにはサッカリンやズルチンが普通に使われていました。安価だったので当時は大量に出回りましたが、毒性があるため、ほどなく使用が禁止されました。特にサッカリンは石炭が精製される時の成分から作られているので、いかにも体に悪そうですね…。
現代も使われている流行語
戦後、流行した言葉の中には、わたしたちが今でもよく使う言葉もありました。カンパ
戦後、シベリア抑留者によってもたらされ、定着した言葉も多くあります。「カンパ」はもともとロシア語で「政治的な運動」を示す意味でした。日本では主に「活動資金を集める」という意味で使われています。
学生運動が盛んだった60年代にもよく使われました。
ノルマ
「ノルマ」もロシア語が由来で「労働生産量」のこと。抑留者たちはシベリアの強制労働で過酷なノルマを課せられていたそうです。今も昔も、ノルマは辛いものなのですね…。
ゴールデン・ウィーク
5月の大型連休をゴールデン・ウィークといいますが、こちらは映画業界が名付け親でした。休みが多いこの期間、映画会社は選りすぐりの映画を上映してヒットを狙ったのだとか。昭和20〜30年代、全盛を誇った映画産業は衰退しましたが「連休」という意味のゴールデン・ウィークはそのまま使われています。
まとめ
敗戦後の日本では、これまでの価値観が崩壊し、敵国語だった言葉がどんどん使われていきました。こうして戦後の流行語を見てみると、リズム感の良い言葉やシャレのきいた言葉が多く、言葉にも開放感がにじみ出ている気がします。
流行語を調べてみると、当時の社会がどんな風だったかが見えてきますね。
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