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女学生カルチャーの発信雑誌『少女の友』とは

少女と雑誌のイメージ
少女と雑誌のイメージ
戦前の一時期、女学生を中心とした少女カルチャーが花開いた時代がありました。そのきっかけとなったのが雑誌『少女の友』です。特に内山基(うちやまもとい 1903~1982)が主筆(編集長)をつとめた昭和初期は「黄金時代」とよばれました。

『少女の友』黄金時代を築いた人々

少女の友の黄金時代には、一流の作家と彼らの才能を生かした名編集者が登場します。

少女たちを魅了した画家・中原淳一

『少女の友』の表紙を飾る愛らしく美しい少女たちを描き、女学生から圧倒的な指示を受けたのが、叙情画家の中原淳一です。

中原淳一の活躍はイラストだけにとどまらず、「女学生服装貼」という特集では、女学生のファッションや髪形、リボンの結び方まで、かわいいイラストを添えて紹介しています。まるで現代のファッション雑誌のような役割だったのでしょう。

中原淳一は他にも、しおりや詩集のほか「フラワーゲーム」など付録のデザインも手掛けています。そのクオリティの高さは、今でも「ほしい!」と思うほど色鮮やかで美しいのです。

少女文化の革新者・内山基

昭和6年(1931)から主筆をつとめた内山基は、当時かけだしだった中原淳一を見出したほか、誌面を上質な小説や詩、美しい付録で充実させました。そこには「雑誌を通じて次世代の少女たちの感性を育てたい」という信念があったのです。

友ちゃん会 「友ちゃん会」と呼ばれた読者の集いは、運営は少女たち自身が行っていました。女が働くことが軽視されていた昭和時代に、自ら会場を手配し、人数を集めて会を進行する。

こうした「少女たちが自ら考え行動すること」。これこそが内山主筆が『少女の友』で目指したことでした。『少女の友』で育まれた友情を、当時の「友ちゃん」たちは今でも鮮明に覚えているそうです。

一流の執筆陣

『少女の友』には当時の一流作家・詩人が作品を発表していました。

文豪、川端康成も『少女の友』執筆陣の一人で、小説『乙女の港』は掲載小説の中で最も人気を誇り、『少女の友』100周年を記念した復刻版にも掲載されました。

『花物語』などの少女小説で知られる吉屋信子は「少女の友を最も理解する作家」と言われ、少女たちの間でファンクラブができるほど人気があったそうです。

そのほか、内山主筆が力を入れた詩のページには、西條八十や中原中也、三好達治など一流の詩人の詩を、美しい挿絵とともに紹介しています。

感受性の強い少女時代に、美しい小説や詩にふれることで、少女たちの感性は刺激されていったのでしょう。

女流作家を育んだ高い文学性

『少女の友』には小説や詩、短歌など、読者の作品を投稿するページがありました。少女たちの作品は総じてクオリティが高く、そうした読者ページから後に作家や翻訳家になられた方もいたそうです。

なかでも『少女の友』出身作家として有名なのが、作家の田辺聖子さんです。田辺さんは女学生時代に短歌や短編小説を投稿して何度も採用されています。

また、『少女の友』の世界観は、小説家・あさのあつこさんや漫画家・安野モヨコさんなど、現代の作家たちにも愛好され、時代を超えて文化を育んでいます。

戦争と『少女の友』

昭和13年(1938)に日中戦争がはじまると、少しずつ戦争が生活を圧迫していきました。『少女の友』もまた軍国路線を余儀なくされ、昭和15年(1940)には中原淳一の降板が決定されます。

しかし、内山主筆はそんな政局の中でも軍国主義の思想を雑誌から可能な限り排除しています。国粋主義を求められれば「私たちの先祖の芸術」と銘打った記事で過去の仏像や埴輪(はにわ)を紹介し、優しい言葉で暗い時代を生きる少女たちを支えました。

伊吹有喜さんの小説『彼方の友へ』では読者集会に兵士たちが現れ、時局に反するとして少女たちを怒鳴りつけ、暴力を振るうシーンがありました。

フィクションではありますが、当時の世相は「美しいもの」を排除する風潮がありましたので、『少女の友』でも同じようなことがあったかもしれません。

しかし、そんな時代の中でも、愛読者の少年少女たちは『少女の友』を地中に埋めて隠したり、疎開先へ持っていったりして、必死に守っていたそうです。

おわりに

以前ボランティアで旧家の片付けをした時、古い茶箱の中に少女雑誌がぎっしりと詰められていました。おそらくその家の娘さんが大切にしていたのでしょう。

きれいに保管されていた雑誌をみて、心が揺さぶられました。少女たちにとって雑誌はまさに「宝物」だったのだ。そんな思いがこみあげてきました。

そして、そんな「宝物」を奪うような戦争は二度と起こしてはならないと思いました。

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  この記事を書いた人
日月 さん
古代も戦国も幕末も好きですが、興味深いのは明治以降の歴史です。 現代と違った価値観があるところが面白いです。 女性にまつわる歴史についても興味があります。歴史の影に女あり、ですから。

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