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江戸幕府が開いた昌平坂学問所の分校、甲府の「徽典館」

 江戸幕府の学問所といえば、神田・湯島の昌平黌(しょうへいこう)(昌平坂学問所)が知られる。儒学者・林羅山が上野忍ヶ岡に開いた私塾を由来とするもので、その後、幕臣子弟に知識と教養を身に付けさせて人材育成を行うために幕府が設立した学問所が、昌平黌だ。

 当時、幕府の学問所に対して諸藩は藩校を設け人材育成を行っていたが、昌平黌の分校が駿府の明新館と甲府の徽典館の2つあり、甲府は江戸幕府の直轄地であったことから昌平黌の分校であった徽典館。

 その歴史は、寛政7年(1795)から寛政8年(1796)にかけて甲府勤番支配の役宅に設けられた甲府学問所に始まるという。「徽典」とは、中国最古の歴史書『書経』の「舜典」にある「慎徽五典」(慎しみて五典を徽(よ)くす)に由来し、人倫五常の道を修めるという意味だという。

 徽典館は現在の山梨大学などの前身でもあり、山梨大学甲府キャンパスの正門のすぐ内側には「重新徽典館碑(じゅしんきてんかんひ)」が建っている。この碑は1796(寛政8)年に創設された徽典館が、1844(天保14)年に新築移転したことを記念して建立されたもので、2016(平成28)年に石碑の修復等を行い地域住民の憩いの場となるようにベンチなどを設置、周辺を整備したものだ。

 また、平成30年(2018)には碑のすぐそばに大村智学術記念館が開館。記念館の外観は、甲府学問所・徽典館の建物の八角三層をモチーフにしたデザインとなっており、江戸時代にもきっとモダンな建物であったことを感じさせるものになっている。

 館内には、山梨大学出身で平成27年(2-15)にノーベル医学・生理学賞を受賞した大村智博士ゆかりの品やノーベル賞関連の資料を展示するとともに、大きくはないが徽典館展示コーナーがあり常設展示されており、教育機関としての変遷の様子とともに徽典館や扁額の拓本を見ることができる。

 展示資料を紹介してくれるのは、なんと山梨大学で研究開発されたという人工知能搭載案内ロボット「さとっちゃん」。展示室内を移動しながら案内してくれ、話しかけると音声で返事をしてくれるのも楽しい。

 甲府城内に創立したという学問所・徽典館。江戸時代の甲府城は広大であり、甲府駅周辺の街はまさに城内。現在の甲府駅から真っすぐに南に伸びる平和通り沿いにある甲府市中央公園には、徽典館跡碑が建っている。

 また、同じ平和通り沿いには徽典館という名の老舗の喫茶店があり、お店のホームページによると、店名は甲府城内にあった徽典館にちなんで名づけたとのこと。こだわりの自家焙煎珈琲とともに、甲府の歴史に触れたような気持ちになるスポットだ。

【参考サイト】
山梨大学 大村智記念学術館ホームページ
https://omura-museum.yamanashi.ac.jp/collection/25/

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  この記事を書いた人
KOBAYASHI Sayaka さん
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