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国宝土偶を2体も所蔵!高原の中に佇む茅野市尖石縄文考古館を訪れる

縄文時代の出土品のうち国宝に指定されているものは、わずか6件。そのうち2件を所蔵しているのが、長野県の茅野市尖石縄文考古館だ。八ヶ岳山麓に佇む施設に足を運んでみた。

JR中央本線の茅野駅からバスも出ているが、周辺の湖や高原の景色も楽しみながらドライブするのもいい場所だ。

受付で「撮影はダメですか」と尋ねると、「一部の展示以外は、大丈夫ですよ」とのこと。ロビーから真っすぐに進み、すぐ右手の常設展示室に、2体の国宝「土偶」はあった。

前後左右どこからでもじっくり見ることができる展示ケースの中に、“縄文のビーナス”はしっかりと立っていた。

国宝「土偶」(縄文のビーナス)
国宝「土偶」(縄文のビーナス)

昭和61年(1986)9月に棚畑遺跡(茅野市米沢)から出土した国宝「土偶(縄文のビーナス)」は、平成7年(1995)に縄文時代の遺跡からの出土品として国宝に指定された。約5000年前の縄文中期のものであり、説明に「高さ27cm 重さ2.14kg」そして「実物」とあった。

切れ長の目、ふくらんでいるように見えるおなか、背中からの曲線が印象的なおしり。帽子かターバンか、髪形なのか、頂部が平らで渦巻き文のある頭部。粘土には雲母が混ざっているのだという。

一方、平成12年(2000)8月に中ッ原遺跡から出土した国宝「土偶(仮面の女神)」は、縄文後期のものであり、平成26年(2014)に国宝に指定されたもの。墓と考えられる場所から副葬品として出土したという。

国宝「土偶(仮面の女神)」
国宝「土偶(仮面の女神)」

何よりも目をひくのが逆三角形の仮面をつけた姿。上半身には文様があり、おへそが出っぱったような丸みのあるおなか、丸みのある脚が印象的だ。

“仮面の女神”の解説には、日本語で約4000年前、英語ではBC.2000と表記されており、「高さ34cm 重さ2.7kg」「実物」と記載されていて、見た目にも“縄文のビーナス”より大きいことが感じられた。

今から約1万3千年前から2万3千年前と、1万年も続いた縄文時代。同じ縄文時代の出土品であっても、この2体の土偶の間には実は約1000年の時間差がある。現在から1000年を遡ると、平安時代になる。長い人類の文化の歴史における1000年は、“ほぼ同時期”という枠組みに収まるのだろうか。

源氏物語の須磨の巻には、人形(ひとがた)を船に乗せて流したという場面が描かれている。「流し雛」が今も続いていることを考えると、「土偶」の用途を考察する上でも「流し雛」とのかかわりは気になるところだ。

館内には文様の付け方や土偶の重さを体験できるコーナーがあり、実際に土で作られた「縄文のビーナス」の模型があった。それを手に持ってみると想像よりも重い。そういえば、先程の展示ケース内には、高さと重さが表記されていた。

文様の付け方
文様の付け方

展覧会などでは貴重な展示品を見ることができるし、実際にこれまで何度も目にしてきたが、高さや大きさは目視でわかるけれど、重さはなかなか体感できないものであることに気づいた貴重な経験となった。

隣接する尖石石器時代遺跡(尖石史跡公園)には、与助尾根遺跡の復元住居で縄文集落の様子が再現されていた。自然の中だからこそできるダイナミックな復元展示は、家族で訪れても楽しめそうなスポット。

与助尾根遺跡の復元住居で縄文集落の様子を再現
与助尾根遺跡の復元住居で縄文集落の様子を再現

“縄文のビーナス”と“仮面の女神”は、国立博物館の特別展で国宝コーナーに恭しく展示される縄文時代の“スター土偶”でもある。その姿も美しい土偶を間近でゆっくりと見ることができる尖石縄文考古館は、縄文好きならぜひ訪れてみたい場所でもある。

◆茅野市尖石縄文考古館
長野県茅野市豊平4734-132
http://www.city.chino.lg.jp/www/togariishi/index.html

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  この記事を書いた人
KOBAYASHI Sayaka さん
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