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武田信玄の治水事業 甲府盆地を守る「信玄堤」を歩く

山梨県の中心となる甲府盆地は、富士川上流の釜無川をはじめとする河川の土砂が堆積して作られた平地。その昔、湖であった場所に神様が山を切り、穴をあけて湖水の水を富士川へと流したという湖水伝説が残る場所であり、氾濫をくり返す河川の治水は大きな課題であった。

武田信玄が甲府盆地を水禍から守るために築いたことにはじまる信玄堤(しんげんづつみ)は、戦国時代から続く治水事業の貴重な事例として知られている。

信玄堤は釜無川と御勅使川が合流する地点では大きな高岩にぶつけるように流れを変え、水の勢いを弱めて、氾濫しないように堤を築いたもの。信玄は「棟別役免除」として税を免除することで堤の近くへの移住を督励する印判状を発していることから、堤を守るとともに耕地の開拓をさせようとしたと考えられている。

信玄の時代からは形を変え、修復・拡張しながらも、今も現役の信玄堤。洪水を防ぎながら、田畑を潤す竜王用水の取水口としても役立つなどの工夫が行われている。

また、信玄堤では中世から使われている伝統治水工法「聖牛(せいぎゅう)」を今でも見ることができる。

信玄堤公園には「聖牛」について説明する看板が立っており、洪水の流れを弱めるために考えられた甲州発祥の日本で有名な古い河川工法であることや、三角の形で牛の角のように見えることから「牛」と名付けられたと考えられることの説明がある。

そして、「聖」の意味ははっきりしないが、現代風にいえばスーパーとかウルトラという意味だろう、とあり、このカッコいい名称からも大きな期待がかけられた治水工法であることが感じられる。

信玄堤公園の近くには小さな神社があり、ここには甲斐国一宮浅間神社の木花咲耶姫命、二宮美和神社の大物主命、三宮玉諸神社の大国魂命の三社の祭神が祀られている。毎年4月15日に行われる大御幸祭「おみゆきさん」は、平安時代にはじまる水防祈願の祭りで、県内を代表するこの3つの神社から、女性に扮した男性が担ぐ神輿がこの三社神社に集結する。

桜や紅葉の季節にライトアップが行われるものの、普段は名所のような雰囲気は一切ない信玄堤公園。大きな看板がいくつか建っているだけの簡素さだが、駐車場には車の出入りがあり、水辺にも親しめる人々の憩いの場になっている。

中央本線JR竜王駅の自由通路の三角モチーフは、水晶や聖牛をイメージしたものとされ、甲斐市に合併前の3つの町をつなぎ留める「鎹(かすがい)」も表現しているという。スーパーでウルトラな牛と信玄堤が、今も甲府盆地を水害から守っている。

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  この記事を書いた人
KOBAYASHI Sayaka さん
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